「浴衣」という特別な着物が有るわけではありません。
浴衣とは着物の種類の中の一つです。仕立ては一般的な着物とまったく同じ。薄い生地でで作られているのが一般的です。
浴衣は、簡単にいうと「楽」な着物の事。
浴衣=涼しい、と勘違いされますが、決してそうではありません。元々部屋着や寝間着として使われていた着物ですので、身体を冷やしすぎないように(寝冷えしないように)、薄くても温かみのある生地が使われたりします。
今の感覚で合わせると、洋服で言う所のTシャツに短パンと同じような位置です。
本来の着方は、襦袢も足袋も付けず、ふわりと羽織ってごろりと横になる時に身につける、「楽」に着るものです。
「楽」に着るものですから、絹のような高価な生地ではなく、安価で庶民的な”木綿”や”麻”などの天然素材で主に作られています。(一部海外製品で化繊のものもあります)
今では「浴衣」は夏に着る着物の代名詞となっていますが、やっぱり浴衣は軽く着る普段着です。
浴衣を着る時期は「7,8月の15時以降」とされていますが、やっぱり明るい時のお出かけにTシャツ短パン相当の着物は見た目がよくありません。浴衣は日が傾き、仕事の後のゆったりとした時間に着るのが見た目にも良い感じです。
浴衣のTPOを考えると、Tシャツ短パンで行けるところは浴衣でもOK。逆にTシャツ短パンじゃまずいところでは、恥ずかしい思いをしてしまいます。(本人次第ですが)
・「仕立て」で分ける
「本仕立て(ほんじたて)」と、
「寝間着仕立て(ねまきしたて)」の二種類です。
本仕立は一般的に夏祭りや花火大会など、外出の時に着られている浴衣です。仕立ては一般的な着物と同じ。男性用と女性用で若干仕立て方が異なります。
寝巻き仕立ては、旅館浴衣に使われる仕立て方です。
寝間着として使いやすいように、袖は筒袖になっており、生地の要尺を節約するため、襟や奥身が狭く作られています。
※着物生地の単位:反、1反で着物が1枚作れる長さです。
10反で着物(浴衣)10枚なのですが、寝間着仕立ては10反で約12枚取ることができる仕立てになっています。
・「デザイン」で分ける
基本的に浴衣のデザインは、同じ柄が連続して続く「総柄」です。
ですが、着物の訪問着の様に決まった柄を決まった場所に出す「絵羽柄」の浴衣もあります。
浴衣は元々気軽な着物ですので、あまり凝った作り方はしません。
生地も総柄で作り、それを切り分け縫製します。
ただ最近TVアニメなどで出て来る浴衣は、そのほとんどが「絵羽柄」。
着物でしたら、仮の仕立てをし、柄をつけ、一度ばらして染め付け、再び縫製します。浴衣で作る場合も似たようなもの。仮の仕立てはしませんが、各部品毎に生地を染め、それを集めて縫製します。
「絵羽柄」は、作る工程をくらべてみると「総柄」よりも格段に手間がかかります。ですので「総柄」以上に高価になることをご了承ください。
また旅館浴衣では「絵羽柄」の浴衣は使われません。
旅館浴衣は耐久性のある「ディクセル方式顔料プリント」を使うのですが、「絵羽柄」ではディクセル方式顔料プリントは使えません。
ですのでもし旅館浴衣に「絵羽浴衣」を使う場合は、洗濯後の色落ちは覚悟してください。
浴衣と帯は、別々に販売されるものです。
大手衣料品店などで、浴衣と帯をセットとして販売しているケースが特別です。
通常は、浴衣は浴衣で、帯は帯と全く別に購入するものです。
本仕立の浴衣の場合、女性用には夏用の名古屋帯や半幅帯、兵児帯など、気軽に付けられるものを選びます。男性用は、着物と同じ角帯や兵児帯などを使います。
最近ではなれていない方向けに、予め結び目が作られている「作り帯」を使う場合もあります。
寝巻き仕立ての旅館浴衣の場合は、旅館浴衣用の細めの帯を使用します。
旅館浴衣はリネンサプライからレンタルされる場合が多いのですが、帯は旅館やホテルが自らそろえます。ですので各旅館やホテルの求めるものによって、異なった帯がそろえられています。