先日、アパレル系の縫製もやっている工場にて、そこの社長と話し込んでしまいました。
内容は、というと、まぁ愚痴に近いものなのですが、現状の繊維産業について実際に手を動かす立場の人の話なので教えられる所がとても多かったです。
新型コロナ禍の最中から後にかけて、たくさんの加工工場が閉鎖いたしました。
繊維産業は非常に分業化の進んだ業界です。
糸を作る、糸を撚る、糸に糊をつける、糸を染める、糸を整形する・・・最初の工程を考えて思いついた順に並べたのですが、すべて別々の会社が行っていました。
これらの工場を管理し、まとめて製品ができあがるまで面倒を見ていたのが「問屋」です。
糸問屋は糸ができるまでを管理し、生地問屋は糸を仕入れて生地ができるまでを管理。その後製品を作り上げる問屋に引き継がれていくのですが(弊社はこの位置)、その各工程を受け持っている工場が一つ抜け、2つ抜け、歯抜けのようになったな、と思っていたらほとんどなくなっていた。で残ったところもいつやめてもおかしくない状態なのが今の状況です。
なぜ繊維産業は分業化が進んだのか、というとコスト削減が進んだからではないかと思われます。
つまり一つの工場ですべての工程を行うと、その工程を行うための人件費がかかります。仕事の薄い時期でも人件費がかかります。
別の工場にお願いした場合、その工場はいろいろな会社から仕事を受けられるので単価を安くすることが出来ます。
次々と各工程を別々の工場にした結果、工賃を抑えることには成功したのですが、今となると高く言ったら同業他社に仕事が行ってしまう恐怖感から価格を上げられない、となってしまったと考えられます。。
「うちの縫製をお願いしていた内職さんがやめちゃってね。」
内職さん、どうしちゃったんです。もしかしてもう歳だから?
「そう、80過ぎていてね。糸目がみえなくて辛いって。」
そう言われちゃうと仕方ないですよね。じゃあ今どうしているんです?
「とりあえず自分で縫っているよ。だから先に受けた注文をこなすのがやっと。この間も新規が来たけど断ったよ。」
そうですね。新しく内職できる人は探さないのですか?
「いないよー、こんな単価のやすい仕事。でも注文受けちゃってるからね、それだけでもね。」
困りましたね。とにかく物ができなくなるのが困るので、できるだけ協力しますからお願いしますよ。
「いやー、でもウチがなくても他があるでしょ。」
他がないのわかってて言ってません?
今、繊維に関わっている工場とか会社とか、どんどん辞めていってるじゃないですか。もうちょっとしたら本当に物ができなくなってくるんじゃないですか?
「そうかもしれないね。でもね、単価も上がらないし仕方ないよ。」
今だって他がないんだから、もう少し単価上げましょうよ。僕が言うのもおかしいですが。
「でもね、この間も◯◯が来てね、価格の話ししたら笑って話を流されてね。長い付き合いだから仕事はしているけど。」
(◯◯とは地元の大手商社です)
困りますよね、話をさせてくれないのは。もう強引に価格を上げちゃいましょうよ。だってなくなって困るのは◯◯だし。
大手の繊維問屋に行って話をすると、未だに昔からの営業がそのまま続けられていて、本当に驚きます。
昔ながらの営業とは、「安く買って安く売る。工場は叩い叩いて安くさせる。値段が上がるのなら他の工場にする。」
新型コロナ禍前までは、年金をもらいながら高齢の経営者が何十年も前の単価で物を作っていてました。
工場経営者は、年金をもらっている=食べていけるので問題なく仕事をしていましたが、若い人が入ってきても食べていけるだけの利益が出ず、入っては去り入っては去る、を繰り返していました。
気がついたら高齢者ばかりの業界で、今になって技術の損失がとか産業自体の存亡が、とか騒いでますが、それもまぁ仕方ありません。
しかも工場の数がものすごく減ってきているのに、大手の問屋や商社は営業方針を変えることはありません。
そりゃあ、安く仕入れて他より安く売るのは”楽”ですから、わざわざ値上げをするような大変な営業をしたくないと思います。
なので繊維業界がどんどん廃れていくのは仕方ありません。
弊社もいつまで仕事を続けていけるのか、できるだけ工場と一心同体となって頑張っていますがなかなか難しい局面に来ています。
