· 

「未さらし」は身体に良いのか

「未さらし」とは、晒し加工をしていない事です。

晒し加工とは、生地を白くする加工のことです。

 

生地を織るときの糸は晒し加工をしていません。

生成りの糸を使っています。

生成り糸で織られた生地は、当然生成りです。

通常は、その生成り生地に晒し加工をし、白い生地に仕上げます。

 

生成り生地は、ベージュと言うかアイボリー色なので、「生成り」というと色の名称と考える人もいますが、いや色でも「生成り」はあるのであながち間違えではないのですが、元々は色ではなく生地の状態を指し示しています。

 

 

で、最近「未さらし」をうたっている商品が多いのですが、本当にそれは大丈夫?と見ています。

どうも「自然に近い物=体に良いもの」みたいなイメージを持つ人が多いため、「未さらし」というと身体に良いものというイメージがあってしまいます。

 

その「未さらし」商品の多くが、薄いベージュとかアイボリー色をしていますが、ちょっと待ってください。

綿花の色って知ってます?

「白」でしょ。

じゃあ元々白い綿から糸を作って、なんで色付きになるのでしょう?

 

 

洋綿 綿花 コットンボール

なんで白い綿から糸を作って、ベージュとかアイボリーとかの色になるのでしょうか。

 

それは生の綿には色々と不純物が入っているからです。

不純物とは、油だったりゴミだったり、もちろん自然のものなので細菌やウィルス、バクテリアなどもついています。

ていうかついているのが普通です。

その不純物が時間と共に変化してきて、もちろん細菌やウィルスの繁殖もありますし、その変化が色となって現れています。

 

で、その不純物を取り去り、殺菌するのが「さらし加工」なのです。

 

 

生成り キバタ生地

「未さらし」の商品をみていると、「身体に優しい」とか書いてありますが、えっ!本当に身体に優しいの?とか思ってしまいます。

多分「身体に優しい」は、さらし加工の際に薬品を使うから、その薬品が駄目みたいなイメージを出しています。

 

ここでも疑問なのですが、「さらし加工」は江戸時代の頃からあります。

江戸時代に化学薬品はありません。

じゃあなぜ「未さらし」が身体に良くて「さらし加工」が身体に悪いような言い方をするのか。

 

もう気がつくと思いますが、化学薬品を使ってその化学薬品が生地に残留するさらし加工が身体に悪いのであって、さらし加工そのものは身体に悪いわけではないのです。

 

もっと簡単に書きますと、化学薬品の残留のある「洋さらし加工」が良くなくて、化学薬品の残留がほとんどない「和さらし加工」は身体によく、さらし加工を全くしていない「未さらし」は身体にあまり良くない、ということです。

 

「さらし加工」すべてが悪いのではなく、さらし加工にも色々あるのを知らない販売業者が、購買者を騙している・・・いや、言葉が悪いか、中途半端な知識で販売をしている・・あ、でもそれでも迷惑を被るのは買った人か・・・上手く言えませんが、そうゆうことです。

 

 

和晒し工場
和さらし工場
和さらし工場
和さらし工場

「和さらし」は伝統的な技術であり、長い時間をかけてゆっくりと生地を漂白してきます。

「洋さらし」は現在最も使われているさらし加工で、短時間に大量に漂白を行います。

 

「和さらし」が約3日かけて漂白するのに対して、「洋さらし」は1時間位で漂白します。

「和さらし」はゆっくりと漂白するため繊維が丸ですが、「洋さらし」は短時間に圧力をかけて漂白するため繊維が潰れます。

 

「和さらし」が使われるのは、伝統的な小巾生地が主流です。小巾は浴衣や着物に使われる生地幅です。

「洋さらし」は、アパレル系の洋服生地によく使われます。生地巾は広幅になります。

 

 

産着
ガーゼ 包帯

「本当に和さらしは身体に良いの?未さらしの方が良いんじゃないの?」

 

じゃあ、病院で使われる包帯やガーゼ、綿はなんで白いの?赤ちゃんが使う産着もそうだし、布おむつだって白いでしょ。

本当に「未さらし」が身体によかったら、病院だって「未さらし」の色付きのモノを使うはずです。

 

これらの医療用に使われる布製品は、全て「和さらし」加工です。

「和さらし」でないと、医療用として使えません。

医療用の基準はとても厳しく、布の表面に化学物質が少しでも残っていると使ってもらえません。

新型コロナ禍の最中は、「和さらし」の生地は医療用に優先して回されたため、浴衣ができなくなった時がありました。

 

 

あとこぼれ話ですが、オーガニックを売りにしているホテルで「未さらし」のタオルを使おうとしたら保健所の許可が取れず、結局さらし加工をしたタオルを生成り色に染めて使うことになりました。

保健所が許可出さないタオル・・・

 

 

なぜ今回ちょっと熱く書いているのかというと、何も知らずにイメージだけで購入した人が被害を受けるからです。

販売者や製造者はプロなのですから、きちんとしたものを売る義務があります。

購入した人が幸せに使えるものでないといけません。

「売れれば良い」というわけでは無いのです。