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なぜ旅館浴衣の出来上がりは前後するのか

オリジナルの旅館浴衣を100枚注文したら、105枚出来上がってきた、または98枚しか出来上がらなかった。

なぜ旅館浴衣は、100枚注文したら100枚出来上がってこないの?

 

業界的には、出来上がり枚数がきっちり注文数にならないのは当たり前のことなのですが、馴染みのない方からするとなかなか慣れない点の一つです。

 

 

旅館やホテルで使う浴衣をリネンサプライからのレンタルでまかない場合は出来上がり枚数のブレはリネンサプライ側で調整する部分ですので気にはなりませんが、自分たちで浴衣を揃える場合、特に今までレンタルだったけど色々な問題で自分たちで浴衣を揃えなければいけなくなり、初めて浴衣をあつらえた時など、なぜ枚数がぴったりじゃないんだろう、と疑問に思う事が多いようです。

 

業界的にキッチリできてこなくても問題にならないのは、浴衣は毎日洗濯して使う消耗品だから、という点があります。

多少数量が多くできてきても、どうせ使って消耗していくものだから問題ない、という事です。

メーカーとしても、少ないよりも多少多めにできるよう生地を手配していますし、多くなる分は一番よく使われるサイズで作っています。

 

他の理由として、製造上の事柄もあります。

 

 

旅館浴衣は、決まったサイズがありません。

 

例えば、中サイズでも、

「Aホテルは身丈140cm」「B旅館は身丈148cm」「Cホテルは身丈143cm」・・・・

旅館・ホテルによって異なります。

 

同じように、大サイズ、小サイズも旅館・ホテルによって異なります。

作りサイズが違うと生地の要尺も異なります。

 

 

わかりやすい二巾生地で例えてみますと、

 

身丈145cmの場合、約708cmの生地が必要になります。

身丈150cmの場合、約780cmの生地が費用になります。

(各縫製工場の裁断方法によって要尺は若干前後します)

 

 

上記の差は、約72cm。もし10枚の差があれば、1枚分余分に出来上がります。

で、実際の注文の場合は、本当に旅館・ホテルそれぞれでサイズごとの枚数が異なるのは皆さんご存知かと思われます。

 

その一方で、大元となる浴衣の白生地は最低ロットの長さがあります。

 

 

旅館浴衣の裁断図

例えば二巾生地ですと、1本約100mです。

ただ生地ですので、色々な要因で決まった長さではありません。

1本:100mというのは建前で、実際は98mだったり、103mだったりします。

 

それらを組み合わせて、例えば500mの生地の注文だったら、95m+103m+105m+100m+102m=505m、みたいな感じで入ってきます。

生地は基本的に、メーター単価ですので1本あたりの長さが長いほど高くなります。

なので生地を織る工場としてはきれいに長く織るのが希望なのですが、実際は横糸が切れた、横糸が絡んだ、ゴミが混入した、などの不具合があって、なかなかきれいに織れません。もちろんたくさん織って良いところだけで100Mということもできますが、歩留まりが悪く高価過ぎる生地となってしまいます。

 

多少の不具合があっても仕立てて収める旅館浴衣では、部品の取り方、縫製の仕方によって不具合を分からなくするやり方がいくらでもありますので、多少の不具合は問題になりません。

逆に、不具合を無くそうとして高価な生地になってしまう方が問題です。

 

そして、その大体100mの生地へプリントです。

 

 

旅館浴衣 染傷

プリントも全てきれいにプリントできるわけではありません。

生地表面に張り付いたゴミなどのためにプリント傷ができてしまいます。

もちろんプリントする前に「前加工」をしてできるだけゴミを取り除いたりしますが、完璧に取れるわけではありません。

 

ただ先に書いたように、プリント傷がついた部分は仕立てた後わからないような部品に使うことができます。

例えば、本衿の掛衿がかかる部分とか、ミゴロでも縫い代に入ってしまう部分とか。

 

なので相撲用の浴衣反物みたいに1反まるっときれいな反物は、プリント傷が入らない部分だけで取れる1反を探しているため、歩留まりが悪くなり高価になるというわけです。

 

 

 

旅館浴衣 生地

  さて、「サイズによって要尺が変わってくる」「生地の長さが一定ではない」「ところどころにプリント傷があるのは当たり前」

これらの条件で、正確に枚数をあつらえようとすると、たくさんの生地をプリントし、その中で良いものだけを使って多めに浴衣を作り、その中から必要な数量を納品する、という方法になります。

簡単に想像できますが、これは捨てる部分が多い。歩留まりが悪い作り方です。

しかも先に書いたように、結局のところ消耗することが前提の浴衣ですので、あまりきっちりと数を出して納品しなくてはいけない必要性がありません。

 

 

下手に注文数きっちりの納品数にこだわるばかりに1枚単価が上がるよりは、数枚多くできて1枚単価が下がる方が良い、これが業界の大勢ですし、弊社としても、できるだけ安く提供したいという気持ちがあります。

とは言っても浴衣が出来上がるまでには色々な人々の手を必要とします。

実際に手を使って作る人にはきちんと対価を払うべきであり、それを踏まえた上でできるだけ安く提供したいと思います。

 

 

なので、旅館浴衣の制作を依頼されたときに、「出来上がり枚数は若干前後しますよ。」との話をしております。