町内会で使いたいなど、踊り用の浴衣の問い合わせをよくいただきます。
踊り用と言っても使われる方々によって大分異なりますので、気軽にできるできるとはいえません。
どんな浴衣を希望されているのか、よくよく聞かないといけないのですが浴衣に詳しい方ばかりではないのでやはりきちんと現物、もしくは写真を見てみないとなんとも言えません。
大雑把な分け方ですが、踊り用の浴衣は「絵羽浴衣」か「総柄(繰り返し)柄の浴衣」に分けられます。
で、やはり多いのが「絵羽浴衣」

「絵羽浴衣」とは、決まった場所に柄やデザインが出ている浴衣の事です。
例えば、必ず袖に名前が入っていたり、裾に線が入っていたりするデザインの浴衣の事です。
それに対して「総柄浴衣」とは、柄の出ている場所が様々な浴衣です。
柄の出方は指定できませんで、例えば花柄だったら花が襟だったり裾だったりいろいろなところに出てきますが、必ず胸のところに出るようにみたいな事はできません。柄の出方は偶然になります。
「絵羽浴衣」はどちらかというと踊り用として着られるもので、あまり夏祭りとか花火大会の時みたいな遊びの時には着られません。
(全く見られないわけではなく、時々手書きなどきれいな絵羽浴衣を着ていらっしゃる方もいます)
で、やはり町内会でおそろいの浴衣、というとこの「絵羽浴衣」を使われるところが多くいらっしゃいます。
とここまで書いても、言葉ではなかなか「絵羽浴衣」のイメージがつきにくいようで・・・
ちょっとフリー素材の写真ですが、下の浴衣が絵羽浴衣です。



今、オリジナルTシャツを作るお店がたくさんあります。
オリジナルTシャツは、無地のTシャツにプリントを入れます。
で、浴衣もきっとそうだろうと。
「今使っている浴衣もどこでもありそうな柄だから、うちの町内会の名前を入れてもらおう」
いやいや、浴衣はそうはいきません。
Tシャツとは違い浴衣は縫い目がたくさん入っています。
縫い目だけじゃなく肩当ても敷き当てもあります。
縫い目やデコボコがあるとプリントの型が浮いてしまい、きれいにプリントできません。
じゃあどうやって作るかというと、各パーツごとにデザインをつけ、それを裁断し縫い合わせて作ります。
デザインの付け方は「捺染」。生地に型を乗せて顔料をつけていきます。
浴衣(着物)は8つのパーツから出来ています。
なので捺染の型も8個必要です。

なかなかピンとこないかもしれませんが、シルクスクリーンが貼ってあるこの型は例えばタオル用にも使われており、タオル用の小さな型でも6,000、7,000円かかります。その何倍も大きな型です。それが8枚です。
だいたい1式で17万円から。けっして数千円で出来るものではありません。
その大きな型を使い染めたものを手縫いで仕立てていくわけですので、数千円で出来るものではありません。
自分に当てはめて考えてみれば良いと思うのですが、浴衣一枚切って縫い合わせて数千円しかもらえない、それってどう思いますか?ということです。
結局Tシャツの延長みたいな感じで考えられているわけで、出来上がった物にちょいちょいと柄をつければ出来上がりでしょ、みたいな感覚だったりするわけです。
モノづくりが本当に遠くなったんだなぁ、と感じました。