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旅館浴衣の出来上がり枚数

旅館浴衣を100枚注文しても、出来上がり枚数は105枚だったり108枚とか、98枚だったりします。

もちろん100枚の注文に対して100枚きっちり、ということも出来ますがその分1枚単価は高くなります。

と、いう話です。

 

100枚とはわかりやすいように書いた数で、実際のところ出来上がり枚数は注文枚数の5~8%増しになる場合がほとんどです。

何故か、と言う前に、増えたことでクレームにならないのかというと、実はクレーム対象にはなりません。

旅館浴衣は、帳簿の科目でいうと在庫品ではなく消耗品になります。

資産にはならないため多少数が増えても問題になりにくいという点と、やはり文字通りの消耗品のため多少多くてもどんどん使っていくので問題にならない、という点があります。

 

 

でもなぜ注文数よりも多く出来てしまうのかというと・・・

 

 

 

なぜ注文数よりも多くできるのかの原因として、大きく3点あげられます。

 

  1. 浴衣生地の長さが一定ではない。
  2. 旅館・ホテルごとにサイズが違い、また希望されるサイズごとの枚数も違う。
  3. プリント不良がどうしてもでてしまう。

 

1、浴衣生地の長さが一定ではない

基本的に、小巾生地ですと一つのまとまりとして12反。広巾生地ですと約100M。ただ生地は伸びるし縮みます。長ければ長いほど誤差が出てきます。また生地を織る時にどうしても不良部分が出てきてしまいます。その不良部分を取り除くと、やはりそこでも長さが短くなったりしてしまいます。

また小巾生地ですと、12反単位ですが1反の長さって元々がきちんと決まっているのではなく、大体着物一着分作れる長さとなっており、旅館浴衣用の別岡生地ですと約11Mになっています。たとえは1反につき10cm短かったら12反ですと120cm短くなります。実際は10cm短かったり、5cm短かったり、ちょうどだったり、5cm長かったり、10cm長かったり、と全部バラバラ。

広巾生地も同じように1本100Mだったり、110Mだったり95Mだったりとバラバラの長さです。

 

原材料の生地の長さがバラバラですので、きっちりと注文枚数が仕上げるのは無理です。

 

 

 

2、旅館・ホテルごとにサイズが違い、また希望されるサイズごとの枚数も違う

旅館浴衣は、決まったサイズがありません。

例えば、”Mサイズ”と言っても、A旅館は身丈150cm、B旅館は身丈160cm、Cホテルは身丈148cm・・と旅館・ホテルごとに違います。サイズが違うということは、必要とされる生地の量も違います。

 

 

3、プリントの不良がどうしても出てしまう

プリントする前の生地の掃除などを行っても、プリント不良は必ず出ます。相撲用の浴衣反物みたいに、事前に二回晒をして前加工をしてからプリントしても、プリント不良は必ず出てしまいます。多分、旅館浴衣だけじゃなくてアパレル用の一般生地も同じように不良は出ているでしょう。

プリントの不良というと、生地の面にゴミが付いていてその部分がプリントできなかった、とか生地にシワが入っていてそこだけ白くなったとか、になります。そういう不良の部分は、浴衣の部品用として使われますが、あまりに多いと廃棄します。

 

 

 

最初に書いた通り、きっちりの数で作ることも出来ます。

ですが、数きっちりの時はあらかじめプリント不良がでることを予想し、多めに生地をプリントします。たとえば100枚きっちりの時は110枚分の生地を作ります。もちろん価格は余分にプリントした分の生地代も上乗せされるわけなので高くなります。

 

「生地取り切り(出来た分だけ)」<「希望の数きっちり」

 

価格の差についてはこんな感じです。

 

実際のところ、旅館・ホテル様で希望の数きっちり、というところはあまりありません。(時々あります)

どうせ消耗品として使っていくものなので多少増えたところで困らないし、それより1枚単価が下がったほうが嬉しく感じます。またプリントし終わったオリジナルデザインの生地が変に残り、万が一流出したらと考えるより全部作ったほうが良いという考えです。

 

作りて側としても、変に生地が残ってしまうよりも浴衣として引き取ってもらえると嬉しいです。作りて特有の感じ方かもしれませんが、せっかく作った生地が無駄になるのは嫌なことです。やはり残り生地が出ないように、全て製品として使っていただくほうが嬉しく感じます。

 

 

上記のような理由で、旅館浴衣は希望数きっちりではなく多少前後した数で出来上がります。

それも業界特有かもしれませんが、使い手、作り手ともに納得していることだったりします。