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旅館・ホテルの羽織の洗濯

新型コロナ禍の影響で、旅館・ホテルで提供される羽織(半天)も洗濯したいとの要望が高くなっています。

 

旅館・ホテルで提供される羽織(半天)の今までの扱いというと、洗濯は年に数回でした。

というのも、この羽織は防寒着であり、生地は丈夫で耐久性が有り長く使える「ウール」を主に使っていました。

「ウール」の特性として天然の油分が汚れを弾くことがあります。

逆に洗濯をしょっちゅうすると天然の油分がなくなり、汚れやすくなってしまいます。

 

そのため洗濯は年に数回で充分だったりします。

(旅館・ホテルの経費削減的な部分も多分にありますが)

 

 

新型コロナ禍の中、浴衣はもちろん宿泊されたお客様が身につけるものはすべて洗濯したい、という要望が旅館・ホテル側から出てくるようになりました。

やはり感染症の広がりを防ぐに、まずは清潔にすることからです。

 

で、浴衣はリネンサプライからのレンタルなので毎回毎回洗濯されたものが提供されます。

問題はリネンサプライからのレンタル商品ではない「茶羽織・陣羽織などの羽織」と「浴衣帯」です。

中でも「茶羽織・陣羽織などの羽織」は、先に書いたように毎日洗濯して使うことを前提として作られていませんので、急に洗濯するとなっても困ってしまいます。

防寒着として優れた性質を持つ「ウール」ですが、普通に洗濯機で洗えるものでは無いことは言わなくてもわかると思います。じゃあ、ってことでウールをクリーニングする時と同じ様に「ドライクリーニング」を行うと、当然水洗いのクリーニングよりも高く付きます。

今まで洗濯せずに使っていた物を洗濯するだけでも余分な経費がかかるのに、さらにドライクリーニングでなくてはいけないなんて旅館・ホテル側としては経費がかさむばかりで困った状況です。

 

 

 

で、よく言われるのが、「洗濯できる生地で作れないか」。

 

実は、浴衣や羽織を作っている業界は、リネンサプライや旅館・ホテル業界から下に見られやすい傾向があって、今までも結構無茶を言われてたりしています。

 

洗濯できる生地で、となるとウールは使えません。

ポリエステルなどの化繊生地は、一見良さそうに見えますが化繊生地のシワは繊維が折れ曲がってつくもので、一度シワが付くと本当に取れません。いつまでもシワシワになってしまいます。

洗えてシワが付いても取れやすくて、となると木綿でしょうか。でも木綿で作った羽織なんて、もうそれは法被と同じようなものです。なんで旅館やホテルに泊まって法被を防寒着として着なくてはいけないのか考えると・・・・

 

今良くあるのがニットの羽織。

でもニットは腰がないので体に沿って下に垂れ下がります。もうこれだけで決定的に見栄えが悪い。

ましてニットは編み物で、織物よりも汚れが溜まりやすいのでしょうか。どうも薄汚れたように見えてしまいます。

 

 

 

はっきり言って、羽織の素材を変えるなんて一朝一夕にはできません。

今までの長い歴史があっての今の素材であり今の形です。

 

羽織の素材よりも洗濯方法を変えるほうが、今の新型コロナ禍の状況に対応しやすいのではと思います。

 

 

「何で洗濯方法変えるんだよ。こっちのやり方変えろって言う前に、お前ンところの生地を変えろよ。」

「お前の生地を変えれば済むことだろ。洗濯変えろってお前何様だぁ?」

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はい、こうゆうふうに言われるのは目に見えてわかります。

だけど何でもかんでも繊維業者に押し付けるよりも、洗濯の方も考えてほしいと感じるのです。

 

改めて今の状況を整理すると、

・新型コロナ禍で羽織を洗濯したい。

・ドライクリーニングでは洗濯代がかかる。

 

ここで、旅館・ホテル側に新しく洗える羽織を購入して入れ替えてもらうよりも、今使っている羽織を洗濯して使うようにするほうが経費はかからないのかな、と感じます。

 

 

まぁ。分野外の繊維業者の夢見事ですが、羽織を吊るしてガスを吹きかけて殺菌・洗浄するようなモノはできないかなぁ、オゾンとか吹き付けるようなものはどうかな、なんて思ったりしています。まぁ分野外の者の夢見事ですが。