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地元アーティストが浴衣を作った時

もう10年以上前の話を、ふとしたきっかけで思い出しました。

 

弊社のある静岡県浜松市は注染浴衣の産地です。

地元産業の振興をあるアーティストが考えて、オリジナルの注染浴衣を作り盆踊り大会を企画しました。

アーティスト自らデザインし、さてこれで浴衣を作ろうと考えた時お願いしたのが「注染工場」。

 

 

ウチの会社も「浴衣を作っています。」というと、「浴衣を染めているんですね」と返される通り、世間一般の方々にとって浴衣は一つの工場で作られるもので縫製とかわかんないから思いつくのが染工場で、染工場=浴衣を作っているところ、みたいな認識があります。”生地を織っている”というと、イコールで織工場を想像するのと同じです。

 

 

と困ったのが染工場。

染工場は染めるだけですので、生地はありません。縫製もできません。

さて・・・・

 

 

染工場の社長がアーティストさんに色々説明したのですが、そんなこととは微塵も思っていなかったアーティストさん。

いきなり生地を手配しろと言われても当てもないし、縫製だってどこで縫えばよいのかわからない。

しかも持っていったデザインが注染では出来ないデザインだったそうです。

 

弊社でも経験ありますが、工場って「余分なこと=クレームになりやすい」という経験があるので簡単に断ります。「こうすればできる」とか「こうしたほうがきれい」とかのアドバイスをくれることはありません。

今回もデザインを見て「無理!!」と断わられるところだったのですが、そのアーティストさんがあまりに可哀想になったとのこと。

 

染工場の社長さん、浴衣問屋さんに話を持っていき、生地と縫製を手配してもらい、デザインもどこが悪いのかアーティストさんに教えてあげて、なんとか浴衣を作ったそうです。

 

 

染工場の社長さん曰く、「二度とやらねえ!!」

 

 

問題点の大元は、”染工場に浴衣の制作を依頼したこと”。

 

なんとなくわかる感覚なのですが、問屋とか商社にお願いすると高くなるのではないかと思ってしまいます。

本当なら易くできるのに、問屋や商社が間でぼって値段が釣り上がってしまうのでは、素人なのをいいことに普通よりも高いものを買わされてしまうのではないか、そんなイメージが有るのは理解できます。

さらに地元で作っているものなら、直接工場に行けば安くできるのでは、というイメージも有ります。

でもモノを作るって、それぞれの工程で専門家が居て分業でモノを作っていく場合が多いので、それを統括する問屋や商社が必要になってくるのです。問屋や商社は統括する分手数料を取ります。それは仕事ですので正当な報酬になります。

 

 

 

実はこの浴衣を作ったアーティストさん、知り合いです。

アーティストさんも「大変すぎて二度と作らない。」と言っています。

 

 

ホント、最初から問屋や商社に頼んで作るようにすれば、こんな事にならなかったのに。

かなり前の話ですが、ふと思い出したので書いてみました。