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弊社が製造工場をもっていない理由

 弊社は自社工場を持っていません。

お客様から注文をいただいくと、その都度いろいろな工場に制作の手配をし、製品を作り上げていきます。

 

浴衣を製造している他の会社のHPを見ると、「自社工場にてすべて作っています」みたいな事が書いてあったりします。いかにも「自社工場で作るのだから、安くて早い」みたいな印象を受けますが、じゃあなんでウチの会社(アイエス産業)は自社工場を持たないの?と言うと、単純に「お客様へ提供する製品を、できるだけ安くて、できるだけ早くて、できるだけ良いものにしたいから」なのです。

 

 

 

旅館浴衣の縫製

 何故、自社工場でないと、「安くて、早くて、良いもの」ができるのか。

 

自社工場を持つということは、かなりの経費がかかります。

繊維産業は年間通して、注文の量に波があります。手がつけられないほど忙しい時ものあれば、全く仕事がない時もあります。自社工場を持つということは、当然そこで働く人も居るわけで人件費、工場維持費、機械代など様々な経費が必要です。

その経費を製品に乗せて販売しなくてはいけないのが、自社工場です。

先にも述べた、暇な時の人件費、工場維持費も、すべて工場で作る製品一つ一つに乗せます。一枚の浴衣に乗せられるコストを考えると・・・

 

 

コスト削減を考えるとき、それと対立するのが生産量です。

コストを減らす:人件費を減らす、工賃を下げる、機械を減らす(ミシンを減らすなど)。コストを下げたら生産量も下がってしまったというのはよくある話で、当然生産量が下がると少ない注文しか対応できません。せっかく大きな注文が来ても、「できません」と断るしかありません。

 

 

コストを下げて、生産量も変わらず、なんて都合の良い話はありません。

コストを下げて、一人の職人さんが専門の仕事だけでなく色々な仕事もこなすと、当然少ない人で工場は回るようになり、人件費は抑えることができます。が、貴重な技術を持つ職人さんに他の仕事をやらせるのは職人さん側としても面白くなく、結局仕事全般のレベル低下に繋がることになってしまいます。そんなトコロでは良いモノはできるはずもなく、製品の質も下がってしまいます。

 

 

 

 

大変で良いことがないのなら、自社工場は持つべきではありません。

それより、近くに専門技術をもった工場がたくさんあって、それぞれに仕事をお願いしたほうがよっぽど早くて、良いものができてきます。それぞれの工場は、色々な会社から注文を受けるので仕事の量も一定となり、コストも低く抑えられます。また同じ技術を持つ工場が何軒かあれば、忙しい時はそちらにも仕事を回すことができ、全ての仕事に対応することができます。

 

でも、専門工場が近くに密集しているなんて都合の良いトコロがあるのか?

実は弊社のある静岡県浜松市がそうなんです。

 

 

 

旅館浴衣のプリント工場

 弊社のモノづくりは、色々な協力工場と一緒に作り上げていくものです。

 

繊維産業は分業化が進んだ産業です。

製品ができあがるまでには様々な工程があるのですが、それぞれの工程ごとに専門の会社があります。あまり一般の人が知らない工程というと・・・生地を白くする”晒工場”や織機に糸をセットする”整経屋”、出来上がった生地を整える”整理工場”なんていうのもあります。

 

弊社が相当するのは、”問屋”です。

問屋は、材料をそろえるところから始めて、全ての製造工程を把握し、それぞれの工場に指定を出し、段取りを組んで製品ができあがるようにします。

それぞれの専門工場は他の工程の専門技術を知らなくても問題ありませんが、弊社のような問屋は全ての専門技術を知らないといけません。知らないと最終的に製品を作り上げることができません。

 

 

 

すべての専門技術を知らないと・・と言っても、やはり限度があります。

なので弊社では、問い合わせや注文があったその都度、工場にて確認をとっています。また染めの現場には必ず立ち会い、縫製の指示も確認しながら進めていきます。

これは、経営こそ別会社ですが自社工場と同じような製造工程をとっていると言えます。

 

それぞれの製造工程に立ち会い、お客様の希望する商品を安く、早く、正確に作り上げる、これが協力工場と密接な関係を作っている弊社の製造方法です。

 

 

 

 協力工場でも、実は得意、不得意な物があります。

 

例えば、注染でも白抜きが得意な工場、白抜きは不得意だが一般的な柄はとてもきれいに染め上げる工場、などなど。

様々な要望のお客様からの注文を、得意な技術を持っている工場に振り分けて作り上げる事ができるのも、協力工場製の特徴です。

自社工場だったら、こうゆう振り分けはできません。

 

 

こうゆう振り分けができるのも、弊社の周りに色々な専門工場があるからです。

正直、立地の良さに助けられている感がありますが、その分専門工場が苦手なお客様との話をつけ、段取りを組む方に力をいれています。

 

 

自社で全てを行わず、同じ地域の工場で製品を作り上げることで良いものを作り、お客様と工場の両方が嬉しい思いをすることを弊社では理念として考えております。