「弊社は浴衣を作っています」というと、ほとんどの方に「染め物やっているんですか?」と聞かれます。
「違いますよ」と言うと。「じゃあ縫製工場ですか?」と言われます。
このことから、「浴衣を作る」=「染める」または「縫う」という世間一般のイメージが有ることがわかります。
「遠州木綿って良いですよね。一度工場見学したいんです。」という人の頭の中には、工場で織機ががちゃんがちゃんと織っている姿が浮かんでいるようです。
日本って本当に物が作れなくなったんだなぁ、としみじみ感じます。
”モノ”を作るにはいろいろな段階があります。
物づくりをしている人は、そのモノができるまでどのような工程が必要なのかイメージします。
でも物づくりしていない人は、自分の持っているイメージの中に一番合致する工程の一部分だけをイメージします。
「浴衣を作る」=「染工場」というイメージを持つのは物づくりから離れている人。
浴衣を作るための色々な工程が頭に浮かばないわけですから。
手織りの織物をやっている友人が言っていたのですが、「手織りをやっているというと、織っているところを見せてください、て言われるけど、織り始めるまでの準備が大変で織り始められたら出来上がりも同然。」
遠州木綿を絶やさないように色々と手を尽くさなくては、という人がたくさんいるけどその対象は織工場だけ。他の工程を行っている工場は目もくれない。
まぁまぁ、弊社は浴衣を作っているわけなので、織物について言っても仕方ありません。
浴衣を作る、そうゼロのところから浴衣を作るということは、まず作るべき浴衣の姿を明らかにして、その浴衣に合う生地を手配し(または織りを行い)、その浴衣にあった染め方ができる工場にて染めを行い、生地の整理工程を経て、希望の形に縫製をする。
最初に考えた形の浴衣を実際に作り上げるということです。
繊維産業は作業の分業化が進んでいるので、誰かが統括して作業を進めないといけません。
その統括する人は、生地のことも知り、染めのことも知り、縫製のことも知らないといけません。
でも生地の職人は染めも縫製も知りません。
染めは言われた生地を言われたとおりに染めるだけ。
縫製は、生地や染めは知らなくても大丈夫。
最近、色々と問い合わせをくださる方々の中には弊社が染工場ではないことを言うと、話が途絶えたりします。
きっとその方の頭の中には、「浴衣を作る=染工場」という図式ができているのでしょう。
普通の個人の方ならいざしらず、企業として浴衣を取り扱おうとしている人までそんな風だと、こちらとしても困ってしまいます。
もう少し浴衣を作ること、それだけでなくモノを作ることを知ってほしいと思います。