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「浴衣を作る」の作業段階

現在の日本では、”服”とは出来上がったものを買ってくるのが一般的です。シャツでもズボンでも、出来上がって並べられているものから自分に合ったものを選んで購入します。ですが一昔前では、家庭でおかあさんやおばあちゃんが服を作ってくれる、ということがよくありました。特に子供の服は、家庭で作ることが多かったのではないでしょうか。

 

 

今、「浴衣が欲しい」という場合も、洋服と同じように出来上がった物を買うのが当たり前になっています。

ですが浴衣も一昔前では、家庭で自分に合わせて作ったものが普通でした。

好きな生地を着物屋さんで買ってきて、着る人に合わせて仕立て上げる、夏が近づくとよく見る光景でした。

 

 

 

出来上がったものを買うのが普通になってしまった現在、中々イメージがつきにくいことですが、洋服も浴衣も本来は「生地を用意する」と「用意した生地から仕立て上げる」事は別々の事柄です。

 

浴衣反物

上記にも書きましたが、「生地を用意する」ことと、「用意した生地を浴衣へ仕立て上げる」これは別のことですので、弊社でも浴衣を作るときもこれは分けて考えます。

 

どうやってオリジナルの浴衣の生地を作るのか、どうゆう染め方をすればよいのか。

捺染か注染かインクジェットか。生地を用意するのも色々な方法があります。

もちろん旅館浴衣も同じで、ロータリースクリーンが良いのか金属ロールが良いのか、どちらが希望のデザインに合うのかを判断し、生地を作ります。

 

 

生地が用意できれば、それをお客様の希望の形へ仕立て上げます。

本仕立てか寝巻き仕立てか、それぞれ得意とする縫製屋さんが違いますので、その都度縫製屋さんを分けて発注を出します。

 

 

そうやって出来上がった浴衣は、「仕立て上がり浴衣」として書類に記載して発送しています。

 

浴衣

一般的な浴衣の場合も、着物屋さんで購入した反物を、

  • 着物屋さんで仕立ててもらう
  • 知り合いの和裁士さんに作ってもらう
  • 自分、もしくは家族や親類に作ってもらう

 

まだまだ選択肢はありますが、大まかに言えばこのような感じでしょう。

 

自分に合わせて作られた浴衣は、とても着やすくて着心地の良いものです。

できあいの浴衣では絶対にかなわない着心地です。

 

 

 

生地を用意してお誂えすることを面倒臭いと考える人も多いかもしれませんし、そのような方々ようにできあいの浴衣もたくさん販売されています。

ですが、本来服は自分に合わせて作るものです。

以前、海外で長く住んでいた方の話で「日本に帰ってきたと感じた時は、洋服は出来上がっているものを買ってくる物と知った時」という話を効いたことがあります。もちろんTシャツや下着のような消耗品はできたものを購入するほうが早くて安いと思いますが、ここぞという時の服はじぶんに合わせて誂えたほうが良いのではないでしょうか。(シャツやスーツとか)

 

 

 

着物を着物屋さんで購入する場合、基本的にはお誂えになります。

その点、洋服よりも自分に合ったものを手に入れやすい環境にあるかもしれません。

 

「生地」と「仕立て」を分けて考えることは、ある意味とても自由な考え方です。

生地だって浴衣用だけではなく、洋服用の生地を使ったって良いわけです。

浴衣用の生地を使って、洋服を仕立てても良いわけです。

 

 

洋服にしろ浴衣にしろ、出来上がりモノが一般的になってしまった事で、出来上がりの巾も狭まってしまったように感じます。