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旅館浴衣の品質

一昔前・・・というと曖昧なのですが、新型コロナ禍の数年前くらいから旅館やホテルで提供されている浴衣は、リネンサプライからのレンタルから旅館・ホテルが自らそろえる流れとなってきました。

まぁその流れが顕著になったのは、新型コロナ禍からなんですが。

 

で、今まではリネンサプライが自分のところの浴衣を用意してくれていたので、言い方が悪いですが自分で考えること無く提供されたものを使うだけ。足りなくなればリネンサプライに「浴衣もってこい!」というだけで済んでいました。

新しいデザインの浴衣を作るときも、リネンサプライが持ってきたデザインの中から「コレ!」って行って決めるだけ。

 

ところが何でもやってくれていたリネンサプライがやってくれなくなり、自分で浴衣を揃えなければいけなくなった時に今まで「おんぶに抱っこ」で来たのでどうすればよいのかわからない。デザインも品質も何もわからない、といった状況となっています。

 

その流れが「オリジナルデザインの浴衣を作りたいからカタログ持ってきて。」という斜め上の発言にも繋がるのですが、まぁこの発言に関してはまた今度の記事で。

 

 

このブログで繰り返し繰り返し言っていますが、「旅館浴衣は、不特定多数の人が着て毎日洗濯をして使われるもの」なのです。

 

リネンサプライが浴衣を提供していたときは、レンタルの回数が多くないと=たくさん洗濯できないと、利益が出てきませんでしたので、耐洗回数が非常に重要でした。(耐洗回数とは洗濯できる回数のこと)

作る方もディクセル方式顔料プリントといった専用の顔料プリントを使い、デザインも色も耐久性のあるものを選択し、最低でも100回は洗えるように作っていました。100回洗濯を、というと回転数もありますが、一般的なリネンサプライで3~4年は持つように作っていました。

 

旅館浴衣の寿命:洗濯回数100回、3~4年 これが定番でした。

 

ところが浴衣を揃えるのが旅館・ホテルとなると、耐久性の事がわからない。

メーカーに問い合わせても良いことしか言いませんので、実際どのくらい持つのかわからない。

色やデザインでも耐久性が上がるなんて、思いもよらない。

わからないことばかりで、メーカーが持ってきたカタログから浴衣を選んで使ってみて、それが1年くらいしか持たなくてもそういうものかくらいしか思わない。実際はコストばかりかかって損をしているのですが。

 

 

色々なメーカーから海外製の旅館浴衣が出ています。が、海外製の浴衣は耐久性を考えていません。

リネンサプライも最初は価格が安く、耐久性が日本製と変わらないというメーカーの言葉を信じて海外製の浴衣を使ったりしていましたが、日本製に切り替えるところが多いと聞きます。

実際にも、某箱根関連だったりリネンサプライチェーンの定番柄だったり。

 

洗濯のプロであるリネンサプライが日本製に切り替えているという事実。

多少安くてもきちんとコスト計算してみると損をしているという判断のあらわれです。

 

ちゃんと言うと、例えば中国製の浴衣は日本製の8割位の価格です。

でも耐洗回数は日本の半分以下。

日本製が1枚5000円として中国製が4000円。

4年後、日本製は追加や買い替えの時期にきますが、中国製は2回目の買い替えになります。

 

 

 

「旅館浴衣」という存在は、宿泊されたお客様からすると「きれいで当たり前」な存在です。

きれいな浴衣が出てきても何も評価されません。

でも汚かったり破れていたりすると、すぐに旅館・ホテルの評価に響いてきます。

 

流行りの「選べる浴衣」、いまだにたくさんの旅館・ホテルが採用していますが「選べる浴衣」が旅館・ホテルを選ぶときの決め手にはなりません。(それより料理や温泉、価格で決める人がほとんどです)

 

コスト削減を考えるのは経営者の義務なのですが、無知のためにコストのかかる海外製の浴衣を使う続けているところの多いこと。

資本主義社会に生きる者としては、同業他社との差別化を考えるのは必須です

浴衣ひとつをとってもコスト削減を考えていくべきだと考えています。